寄り道
 
  「帰り道に..」
 
  雨降る帰り道、対向車のヘッドライトの光で道路の端から走り
 出す物陰がいた。幻影だけでネコかなと思ったが、それにしては
 図体が大きいので走る方向に目線を合わせるように見ていると
 尻尾が太かった。そのとたんに、道路の端に渡りきって草むらの
 中に消えていった。ただ、それだけの話だが。札幌の郊外に出る
 キツネ。いつだったか、札幌駅の近くの植物園にキツネが徘徊し
 ていた話を想い出す。こんな人里に出なくても良いのにと、つい
 他人事の様に思ったが、危険を冒してでも来なければならない
 理由があったのだろうか。その点私なんぞは、惰性で時間を過
 ごしているのではないか。キツネが、人里近くに来るのを見て感
 じ、感傷的な気分になった。
 
 突然、12月近くなったというのに「バキバキバギューン」とオート
 バイのアクセル手一杯広げ唸り音を上げている若者がいた。街の
 所で物足りなくって、こんな簡素な住宅街で頑張らなくても良いの
 に、夜中の1時頃に捲し立てていた。キツネより字を読み書き出来
 る能力あるのに。言葉だって使うことも出来る。何もないキツネを
 見れと言いたいと、憤慨していた。だが待てよと言う気持ちになっ
 た。若い自分の時どうだっただろうかと、説明出来ない世の中の
 矛盾や理不尽な事などを晴らす衝動にかられる事あったように
 記憶しているな。幸いにして、人様に迷惑を掛けないで済んだけ
 ど。今思うと良い悪いの方向に行く決める決断は、一瞬の紙一重
 で決まっているのが常だった。そう思うと何かわからないが、身震
 いをしたがこれが現実だ。今振り返って見ると自分にも、自分の周
 りの人達に対しても迷惑掛けないことは、実は大変なことなのだと
 思う。人を傷つけたり厭がることをしたり、盗んだりするのは論外に
 悪いことだ。そこで、もう一歩進んだ思考行動が要求されるのでは
 ないか。本当かなと疑問抱いたり、あやふやなことを楽しむ精神を
 持つ。例えば失敗した時、「自分のせいかな」と、振り返り安くなる
 ような気がする。その結果次回からはこの手でいこうとタフな精神
 を持てるのではと。
 
 そう思っているが焦りすぎるから、うだつの上がらないこのザマさ。
 
 
                       春風するめ