ちょっと一休み
「見た目気持ち悪い客....」
ノンビリと、ベランダでヨコになっていたら腕ところを何か走る物
があった。
普段なら、いちいち見ないのだが、なにか気になったので見たら
クモだった。
小さくて、動きの速く糸をあまり出さない奴だ。
クモは、家を守ってくれる昆虫の一種と聞いている。
家の害になる虫を補食するので益虫なのだそうだ、でも見るか
ら気持ち悪い虫だ。
子供の頃は、気持ち悪いとは、思っていなかった。
トンボ網が破れて使い物にならなくなった時は、張りガネを残し
輪になっているところを、大きい蜘蛛の巣を当てると、テニスのラ
ケットのようになる。
ひとつのクモのネットでは、弱いので何カ所も、蜘蛛の巣を当て
て、すると結構な弾力もあるし、くっつきもよくなるので結構虫が捕
れた。
大きいクモは、くもの巣の真ん中にいるので、背中から捕まえて
火の中に入れ、丸くなるのを見て遊んだっけ。
勿論、私一人でなく友達と一緒にやった。
そんなことを思い出し、良き時代だった。
家内は、クモが基本的に嫌いだが、クモが来たら紙を敷いて載
せて外に逃がしている。
以前あんなに厭がっていたのに、理由を聞いた。
「私が、もし地獄に行ったら蜘蛛の糸を垂らしてもらえるクモち
ゃんだから、大事にしなきゃね」と、いうのである。
う〜んと、うなずいてしまった。
例の「蜘蛛の糸」(芥川龍之介書)の話する。
悪行三昧のあげく地獄に追いやられ、たった一つの善行で天国
へ抜け出そうという物語だ。
その、クモの糸で地獄から自分だけ抜け出そうと行動した時、
糸が切れ地獄に戻った物語だ。
この世の中、問題だらけ「かんだた」のように、自分だけの基準し
か持っていない奴は、結局最後は、誰も手を差し伸べてはくれない。
自分自身で身を滅ぼすのだということだ。
さて、私の場合、子供の頃クモをないがしろにしたから、地獄にい
ったとしたら蜘蛛さんに、糸を垂らしてもらえるだろうか。
一抹の不安を感じ、クモをじーっと見てしまった。
春風するめ