ちょっと一休み
「主が居なくなった鳥小屋」
家内は、毎朝ニワトリを出す。
一回外に出すと、年老いニワトリでも捕まえる事が出来ず、ニワトリ
が自身が入るまで待つしかないのだ。
その様な状況のなかで、物置を整理していて時間になったので、あわ
てて用事をたしに出かけてしまった。
今回は、何かしら嫌な予感がしたので、早めに用事を切り上げ帰宅
した。
家内にしては、珍しくニワトリ小屋に急いで見に行ったら、「1羽が、
いない」と、大騒ぎになって、一緒に探した。
「どこへいったんだろうと」「ピピ子」と呼びながら探していると、庭の
片隅に白い羽が散乱してた。
「殺(や)られた」と思いながら、屍が有るはずだと捜したが、辺りが暗くな
ったので止めた。
家内は、もう娘三人に、メールで知らせていた。
大騒ぎの2日後に、猫が庭で、ノッソリとゆっくり歩いているではないか。
こいつが犯人だと確信できる行動をとった。
憎き犯人、猫を捕まえる仕掛け(ワナ)を急いでセットする。
それから何日過ぎただろう、「猫がかかっている」と、家内から呼ばれた。
「どこかの家で飼っている猫」小柄なシャム猫だ。
猫が捕まり「一安心した」と言いながら、残りの1羽にエサを与えに行っ
た家内から、「あし子が頭をもぎ取られ死んでいる」と、ショッキングな声が
聞かされた。
ニワトリ小屋を開けっ放しでいたために、仕掛けに掛かった猫に殺られた
ようだ。
どうも、先程の経験が生かされないようだ。
ニワトリの「あし子」は、白内障を煩っていて、外にも出れず12年位は生
きた知恵のある、おばちゃんドリだった。
一変に、ニワトリの居ない世界と、主(あるじ)のいない小屋が出来てしまった。
彼らの外敵を防ぐ網と、それを張るための鉄管も入らないし、小屋も、
壊してしまおう。
家内が言う「ピピ子たちが、居たお陰で、やすらぎを得たし優しい気持
ちにもなれた」と。
この今迄の出来事や思い出を通して、私は何を学び、何を得る事が
出来るのだろうか。
当然の事ながら、生き物は必ず死ぬ事は知っている、嫌なことではあ
るが、事故や病気にあわない限り、年老いて死ぬはずだ普通は。
年をとり、足の不自由な「あし子」は、それなりの世界を見つけて生きて
いた。
その様な気がする。
私は「あし子」のように、新世界を見つけ出す意気込みが、あるだろうか。
そんな問題を与えられた気がした。
春風するめ