ちょっと一休み
 
 「近頃なんとなく...」
 
 最近なんとなく、クラシック音楽を聞くようになった。
 人から貰ったチケットでコンサートに行ったのがきっかけだ。
 物語がある演奏、指揮者が演奏にたいする楽器の配置などのこだわ
 りというか、おもいれなども含めたものを楽しむ。
 もう一つ感じたのは、ただ演奏を聞くのではなく、この曲と、演奏する
 人達と指揮者の調和、共同作業を聞いた様な気がして、なにかしら
 「すばらし〜い」を体験した。
 体験を感じて、昔を懐かしむ気持ちになってしまい京都から取り寄せ
 香を焚(た)いてみた。
 お茶会を盛んに行った若い頃(今も若いつもりだが...)を...。
 
 突然、「この臭い何なの」と、家内が煙たそうに言って来た。
 世知辛い世の中になって、家内の心の教養まで奪ってしまうのかと嘆
 いてしまう一場面である。
 昔のことを思い出した事を話したら、家内が「まだ結婚する前のこと
 だけど、私の入院見舞いの為に札幌の大通りでウサギの風船を買い、
 電車に乗ったら2歳〜3歳児位の子が、私が持っている風船を欲しそ
 うに指さし、子供から見えないように両手でかかえ、あなたに届けた
 のに、次の日、19歳の看護婦さんにあげたもんね。当時の私は20歳
 だったけど」と、35年以上過ぎた、今になって言われた。
 女って、怖いなと思ったた。
 
 たしかその時、若い夫婦の旦那の方が入院して子供が泣き止まず、
 看護婦さんに持ってくように渡したその事だ。。
 赤ちゃんと言って良いくらいの子だけど風船を見て泣き止んだ。
 子供から風船を守り、別の子供にあげたと記憶していたが、時が経て
 ば、その事実は薄れて行くのだろう...。
 
 私に説明能力があったならば、その問題は解決処理出来たはずなのに。
 過去の事は、取り返しが効かない。
 
 気分を変えるために、先週からの続き雪囲いをすることにした。
 「ピーィ。ピーィ」と黄色い声で鳴きながらヒヨドリが来た。
 桜の木につり下げているリンゴを目当てに来たのだが、我々がいるの
 でエサにありつけんと鳴いているのだ。
 「今、こちらが何をしているか、わかっているのか。雪の重みから木の
 枝を守るための作業をしてるのだ。」とヒヨドリに言いたい。
 そのとき、思った。
 彼らの身勝手さと、家内の誤解、私は私の思いはあるなかで人それぞ
 れだと、言う事で一件落着としようかと。
 
 
                        春風するめ