ちょっと一休み
 
 「ちょっとが出来ない..?」
 
 仕事を終えて家のニワトリ小屋を見ると、暗くなっているの
 に戸が開いていた。
 家内は一瞬、変な予感がしたのだろう。
 急いで、懐中電灯を取り出しニワトリを数え一羽が足りない
 大騒ぎになった。
 一瞬の気のゆるみが、外敵に襲われ悲劇を生み出すのだ。
 牙や爪を持っていない、弱い動物の宿命だ。
 暗い中探して、片隅に白い羽のような物が見つかった。
 血が、ついているが身体が見あたらない。
 無事でいる望みが絶たれた。
 翌朝、隣の隣りの縁の下に死骸があった。
 そこの家の猫の仕業だ。
 朝、川の土手を悠々と歩いてた赤毛の猫だ。
 家のニワトリは、4羽になってしまった。
 私は、腹が立つが、その飼い主に文句を言いに行かないで、
 猫を捕まえ始末する事にした。
 
 勿論、仇を取らなきゃと思いながら仕掛け(ワナ)をセットしたが、
 真抜けたことをやった。
 エサを仕掛けた次の日、憎き猫が真っ昼間に、堂々とエサを
 目掛けてワナに入った。
 そして、エサをそろーっと取って行くではないか。
 普通なら、仕掛けの蓋が閉まるのだが閉まらない。
 「こらぁー」と、追っかけたい逸る(はやる)気持ちをこらえて、猫が去る
 まで我慢した。
 蓋か閉まらなかったのは、エサを連結ひもに縛り付けていなか
 った為に、エサだけ取られた。
 次のチャンスに、期待を込めてエサを仕掛けた。
 ところ、その猫も馬鹿だよ。
 二度、同じ調子良いことありゃしないのに、掛かったよ。
 改めて見ると太っていて、度胸のありそうだが知恵のない猫だ。
 車に積んで20km走行した、近くの川のそばで解放した。
 私は思う。
 かれ(猫)は、飼われていたところだけで満足できず、他人の領
 域に来て狩りをした結果が、今の現状を招いたのだと。
 彼とて、危険なしで獲物を捕食出来ると考えていないだろう。
 その代償として、新天地で気の抜けない捕食生活をしなけれ
 ばならなくなったのだ。
 たまたま俺様が、猫が好さだから、この程度で済んだのだぞと、
 言って聞かせたが、「わからんなぁ猫には」。
 戸を閉めるちょっとした行動をとれば、ニワトリは、犠牲にならず
 に済んだものを。
 これが、悲劇の始まりさと学ばされたよ。
 
                      春風するめ