ちょっと一休み(2004年12月)
 
 「友達キーヤンは逝ってしまった」
 いつものように仕事を終えて家に帰ると、柵(サク)どびらを
 早くあけれと言う態度をとって、家の部屋を一回りして自分
 の縄張りを確認するのだ。
 近頃は、ヨロヨロした歩きになり転ぶようになった。
 
 毛並みは悪く、毛が抜けハゲ出来るようになった。
 家の者は、心配していたが10月下旬頃から、自分の巣に
 まるくうずくまって、足をだらたしなく出していた。
 「キーヤン」と呼んだ。
 耳をかすかに動かし、がらだをなぜたら冷たく。
 何故か、明日の朝は死んでいるなっと咄嗟に感じた。
 
 考えたくない気持ちがあり、「朝には会える」と自分に言い聞
 かせるように風呂に入った。
 まもなく、女房が「キーヤン死だ」といってきた。
 あいつ、私達が家に帰ってくるのを待っていたんだ。
 そう思うと胸迫るものがあった。
 
 あいつ、家に来て8年と半年は過ぎた。
 家の家具や電気のコードなどかじってボロボロにした。
 けど、私達家族に、和(なご)みを与えてくれた。
 
 あいつは馬鹿なオスであったが、ニワトリよりは利口だった。
 犬や猫より物覚えは悪っかったが、コリ性の無いそんな、ウサギ
 であった。
 あいつは、生きている間、私に何を訴えかけたかったのだろう
 か。
 何を教えられた。
 ふでぶてしい、その動作が愛嬌(あいきょう)があり、うらまやし
 いと思った事もあった。
 
 それは、ことばを置き換えるとわかりやすい「ふてぶてしい」を
 失敗に代えてみた、もう一つ動作である「愛嬌」を一生懸命物
 事に打ち込む姿に代え、自分の事に照らし合わせ考える。
 あの人は真面目だが、ときたまミスをするんだよ。
 でも、悪気のない性格だから、これ位のミスは面倒をみてあげ
 るよ。っと、いった評価をしたい。
 そんな気がした。
 
 友達キーヤン、手一杯元気を見せてくれて有難うと感謝したい。